机上読図問題

問7の解答

21名の応募をいただきましたが、楽しんでいただけたでしょうか?本問題のプロトタイプは、昨年9月発行の「読図ワークブック」に掲載した中の1問であり、その問題は元国土地理院長をして、「難問でした」と言わしめたものです。彼は、解答に記された地名から元の地形図を割り出し、特殊な地形であると納得したところはさすがでした。

 今回の問題はいずれも房総半島からとっています。房総半島は東京湾(北西)に向かって緩やかに傾斜し、太平洋側との分水嶺は極端に太平洋側にあります。それが顕著なのが、安房小湊・勝浦といった地図の範囲であり、今回の地図の多くはそれらの場所から取られています。ウォッちずなどでいちどご覧ください。感動ものです。

 

 等高線(主として計曲線)によって確実に尾根谷が分かるのは、1-5,7,8で、6,9,10は、等高線の形状の自然さや尾根・谷の形状を頼りにする必要があるので、本問題の意地悪さからすれば、それはてがかりにならないとも判断できるので、入試問題なら、確実に予備校からクレームがつくところでしょう。

採点は一応現実の尾根・谷を元にしましたが、以下に記すように、理由づけが明確であればこれらの問題については不明も可としました。これら全てに不明をつけたOTさんの緻密な観察力は拍手もの!

比較的上位の得点を得た方の多くは、**であることを示すために「もし**でないとしたら」という論理展開を多用していました。特にOKさんとAMさんの論理構成はすばらしかった。これは曖昧な自然の中で確実な解答を得る上での有力な方略であり、これは現在地把握にも有効な方法であることが、心理学の研究でも示されています。

 

 以下解答例です。なお、送電線の:が鉄塔の位置と誤解した誤答が何例かありました。記号を正確に知ることは地図利用の基礎です。しっかり憶えましょう。

回答の下に得点順に成績を一覧表を掲載します。△は理由付けに問題があるものですが、得点としては加算してあります。3名の満点者の方に「山岳地図の読み方」を3/10ごろ発送いたします。ご住所をお知らせください。

1:谷

 集落の中にあるこぶeとcの計曲線は間に4本の等高線があるが同じ高さと考えるのは不自然であり、どちらかが高い。cが高いとするとeは凹地になるが、そのような記号になっていないので、cが高い。従って点は谷。

その他にも上部に水田aがあり、ここが低い。その次の等高線dは東が高いと思われ、そこからの斜面の自然さを考えても下が低い。

 

2:谷

尾根だとする(右上が高い)と、点の左および下にあるU字型の等高線aは谷の源流を表すことになり、尾根からみてその反対側は高いことになる。すると計曲線の1本下側の等高線bはそれより登っていることになる。さらに南側の尾根はピークcがあることから登っていると考えられるが、そうすると計曲線から一様な斜面であることになるが、それでは計曲線間に主曲線が2本しかないので、おかしい。反対に点を谷だとすると、そのような矛盾は発生しない。

 

3:谷

 これは海から5本目、6本目がいずれも計曲線であることから、この部分が尾根で傾斜が登り→下りになっていると思われる。

 

4:谷

尾根だとすると、この部分は上向きの下り斜面となる。すると池の両脇にある等高線の2本目aが計曲線でないことから、この部分は谷であることになる。この場合、二つの谷にはさまれた場所にこのような形で池があるのは不自然。

もう一つの可能性としてb=aである可能性もあるが、そうすると、さらにb=cとなり、南側の斜面の下に細い谷があることになり、地形としては不自然。

谷だと考え、ここが下り斜面だと考えると、このような矛盾はない。なお図7と重複があることをヒントにすることもできる。

 

5:尾根

三角点がある場所は、がけの記号からみてもピークである。この等高線はいずれも計曲線ではないので、aからb方向に向かって一様に斜面が下っていると考えないと、計曲線に矛盾が生じる。従って、点のある位置は下向き斜面なので、尾根。

 なお南東のマークは「荒れ地」であり、高さの手がかりにはならない。

 

6:尾根

 谷と仮定すると、北西に向かった斜面となる。すると北西角付近の複雑な等高線aは低地の中の谷(ピークとは考えにくいので)としては不自然なので、谷ではなく、南東に下った斜面と解釈出来る。なお送電線の:位置は鉄塔を表すわけではなく、また図内では直線なので、やはり高さの判断材料としては使えない。

ただし、上のような不自然さは確実なものとは言えないので、理由付けによっては不明も正解とした。

 

7:尾根

 また決定的なのは、右端に崖bが見え、下向きの下り斜面。

また上部に水田がみられるので、一見上が低く谷のように見える。だとすると、点の少し上にあるピークaがあるあたりが、計曲線の1本上の等高線に囲まれた低い場所になる。するとそこにピークが二つあることやそれより高い位置に水田があることなど不自然である。

 

8:尾根

 7と同様に、上向き下り斜面とすると水田のある場所が低いと考えられるが、その中に計曲線aがあり、a=bとはなるので、aが高くなっていることになる。これは不自然。a=でその頂上部にピークcがあると考える方が自然。

 

9:尾根

 点のすぐ下や上の等高線のとがり具合から、これらが谷だと推測できるので、尾根。(というのが村越の最初の解答例)

(応募者によるより優れた解答例:上部の道のすぐ上にちょんと出ている等高線aからその両側の等高線2本は同じ高さと考えるのが自然。するとこの部分は尾根か谷のどちらかだが、谷だとすると左の狭隘部bは不自然(ただし、ここは谷がさらに標高を下げたという解釈もありえるが、すると、左下隅にもやはり1段下がっているとしか思えない等高線がありc、不自然である。村越補足)。)

ただし、aは地図に見えているUとともにその左の等高線と逆Uでつながっており、左の等高線も同様に1本であり、一様な斜面と考えることもできる。そうすると点の位置は尾根とも谷とも解釈できる。

この問は理由づけが十分であれば、他の解答(不明等)も正解とした

 

10:谷

 中央下からU字型に等高線が入ってきているのでa、この部分が尾根か谷であると思われる。これが画面中央でY字分岐している。右側の分岐先を見るとピークがその谷(ないしは尾根)に絡まっているb。尾根だとすると尾根で丸く囲まれた中にピークがあることになりやや不自然。従って、この部分は谷と思われる。点がある斜面は北西に高い斜面なので、点の位置は谷。

(ただし、こう判断したとしても、点を囲む計曲線間の等高線は偶数本であり、中央部cが尾根である可能性も否定できない。従って不明という解答も正解とした)

成績

氏名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 点数
YD 10
OK 10
AM 10
MT 谷△ 尾△ 尾△ 9
NH 9
KT 尾△ 9
IK 尾△ 尾△ 8
NY 8
I 谷△ 尾△ 尾△ 尾△ 谷△ 8
SN 8
OT 不△ 7
SK 6
ST 尾△ 谷△ 6
AA 谷△ 6
MN 谷△ 谷△ 尾△ 4
TR 谷△ 尾△ 谷△ 4
SK 谷△ 3
NT 谷△ 2
TA 谷△ 尾△ 2
K 1
YS 0
正答
正答率 0.57 0.81 0.62 0.52 0.81 0.38 0.62 0.71 0.62 0.57

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

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