11月19日、静岡で開催されている「地図展」に併せて静岡大学で日本国際地図学会の例会が開催された。例会に参加する人は、通常地図に興味を持ち、地図の利用に長けた人だが、日常の地図利用でもっとも難しいアウトドアでのナヴィゲーションで地図を使う経験のある人は多くはない。村越が講師を務めるチャンスを生かして、これらの人たちにアウトドアでのナヴィゲーションの難しさを体験してもらうことにした。
最初にアウトドアでの地図利用の現状について簡単にレポートした後、静岡大学の裏山を約2kmほど歩き、現在地の把握をしてもらった。参加者は4名であったが、いずれも学会や地図センター関係者で、日ごろから地図をよく利用している人たちであった。それでも、思ってもいない場所にいたり、ピンポイントで居場所を示すことができないなど、アウトドアナヴィゲーションの難しさを実感したようであった。
途中から加わったM先生が、「こんなところでもランドマーク(目印)を見つけることができるんですか?」と質問した。村越自身は、尾根上の鞍部やピークなど明らかに目立つものが見てとれるが、M先生はじめアウトドアナヴィゲーションがはじめての参加者たちにはあいまいで何も特徴のないように見えるらしい。確かに1:25000地形図では尾根上はのっぺり描かれており、特徴らしいものはない。私たちオリエンテーリングをしているものは、それより細かい基準で「これは鞍部で描いてあるはず」「これはピークのはず」と、無意識のうちに地形を分節化しているようだ。はからずも、自分たちの地形の見方がオリエンテーリングに特化したものになっていることを浮き彫りにさせてくれた。地形が分かるようになるということは、単に等高線で尾根・谷が分かるだけでなく、どんな基準でそれらを読み取るかという判断基準も含めて学習することなのだろう。
とりわけM先生の鋭い質問で、自らのナヴィゲーション能力の根底にあるものを意識することのできた、講師としても有意義な例会となった。