M-nopコラム

ナヴィゲーションの伝道師、村越真による日々ナヴィゲーションコラム。

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最新コラム

2021年

9月

25日

コラム147:ブレークスルー感染

 ブレークスルー感染とはキャッチーな言葉だ。すさまじいことが起こっているような印象がある。本当だろうか?

 

 この言葉はワクチンを2回接種して抗体ができているはずなのに感染している現象をさすらしい。だが、もともとワクチンの有効性はファイザー・モデルナともに95%程度らしい。ということは20人の一人はワクチン接種をしても感染してしまうことになる。5%は統計法では「滅多に起こらないこと」の代名詞になっているので、高い確率ではない。しかし、低くもない。これまでの国内感染者は150万人強だから、単純計算しても(そう単純ではないかもしれないが)、国民全員がワクチンを接種していたとしても7.5万人は感染することになる。これまで一日の感染数が最も多い日は2万人くらいだから、同様に5%なら1000人だ。第二波とされた昨年の8月でもこの2倍には達していない。しかも、95%の有効性というのはワクチン以外の要因は統制しているはずだから、それ以外で感染につながる条件が加われば、効果は当然低くなる。

 

 例えばマスクである。マスクには飛沫の飛散も吸い込みも防止する相当の効果があるようだが、感染率についてのデータはネット情報で見ても2%から79%で、あまりに幅が広い。他の要因の影響が大きいのだろう。仮に50%とすれば、ワクチン接種によってマスクを外せばワクチンの効果は半減する(相乗でよいかは疑問があるが)。飲食場面など、特に問題となる場面で外す動機づけが強いと考えれば、ワクチンの効果はさらに限定的になるのではないか。

 

 ニュースになれば、それが頻度の高い現象だという印象を受ける(これを利用可能ヒューリスティックと呼ぶ)。しかし、珍しいからニュースになることを忘れてはいけない。これまでの感染者数の1/20程度にあり得る現象なのだ。淡々と対応しつづけなければならない。それ以上でも、それ以下でもない。

コラム一覧

no.147 ブレークスルー感染 New!!

no.146 正常性バイアスは本当にあるのか?

no.145 コロナ感染リスクと所得水準

no.144 リスクに対応する言葉

no.143 ツールの特性を知る

no.142 地図が読めれば生き残れる!? 

no.141 時代

no.140 Control your destiny, or someone else will

no.139 自然の中のリスクに備える

no.138 コースプランニング

no.137 若者の自然回帰

no.136 台風のさなか、走りに行こう!

no.135 台風のさなか、山にでかけよう!

no.134 Control your destiny, or someone else will

no.133 南極観測に地図は必要か?

no.132 世界最難関ロンドンのタクシー運転手試験

no.131 山のお約束

no.130 ゴールデンウィークは東京へ

no.129 那須岳雪崩遭難に思う

no.128 山岳救助有料化に思う

no.127 脳の仕組みと方向感覚

no.126 データベースの威力

no.125 橘樹今昔物語 

no.124 コンパスは飾りじゃない!

no.123 太陽が西から上がって東に向かう?

no.122 人事を尽くして天命を待つ

no.121 今、山のグレーディングが熱い! 

no.120 見えていない世界

no.119 後悔 

no.118 組み体操

no.117 通俗心理学の罠

no.116 古地図で蘇る東京

no.115 階層的規律は登山隊の成功につながるか?

no.114 精緻な数値情報は正しい危険評価に貢献するか?

no.113 山のグレーディング

no.112 リスクマネージメントとナヴィゲーションの発想

no.111 GPSスマホの落とし穴

no.110 地図の抽象性

no.109 道迷いシンポジウム 

no.108 ナヴィゲーションのファンタジスタ

no.107 登山届け義務化に反対する

no.106 ノーベル賞

no.105 安全と教育意義のジレンマ

no.104 リスクは誰にでも顕在化しうる

no.103 子どもの学び

no.102 江戸の近郷 

no.101 山岳雑誌に見るリスクマネジメント・道迷い遭難

no.100 今昔物語

no.99 城南地形萌えラン

no.98 ナチュラル・ナビゲーション

no.97 地図を使わない・・・:学校の自然体験

no.96 ドクタージェネラル

no.95 ナヴィゲーションを支える身体知

no.94 リスクマネージメントとナヴィゲーションの発想

no.93 拡張現実

no.92 空間認知心理学の進歩

no.91 研修の楽しみ

no.90 ナヴィゲーターの難しさ

no.89 地図は邪魔者

no.88 暗黙知としての地図読み

no.87 クイックOの可能性

no.86 冬山でのナヴィゲーション(2012/3/20)

no.85 はやぶさ

no.84 ナヴィゲーションスポーツで脳も体も健康に!

no.83 ナヴィゲーション・スポーツというコンセプト

no.82 反事実的思考 

no.81 山岳遭難の現状2011

no.80 登山に地図を生かすには?

no.79 できる人は地図思考

no.78 時には悪天候も悪くない

no.77 赤色立体図はすごい

no.76 ナヴィゲーションへの組織的な動き 

no.75 生きて帰る 

no.74 現在地が分からない

no.73 折り紙の地形

no.72 緊急特集:道迷い遭難

no.71 読めないふり

no.70 女は地図が読めないか?

no.69 GPS vs 地図読み

no.68 ブラッシュアップ

no.67 学習登山 

no.66 大人はなぜつまづくのか? 

no.65 読図を教える

no.64 ゆらぐ

no.63 高まる読図への関心

no.62 富士山アウトドアマップⅡ

no.61 地形萌え

no.60 読図力とその自己評価

no.59 中高年遭難という言説

no.58 2008全国遭難対策協議会に参加して

no.57 死者は語る

no.56 あらためて知るコンパスの効用

no.55 地図屋の気概(3)

no.54 地図屋の気概(2)

no.53 コンパスをテストする

no.52 広がる読図講習会

no.51 今年もセンター入試:1/21

no.50 07年を振り返って

no.49 ナヴィゲーション・マスター

no.48 女性セブン

no.47 地図屋の気概

no.46 読図講習会で学んだこと 

no.45 ショップと共催の読図講習会

no.44 地図に訊け!

no.43 ハザードマップ実験をして

no.42 「考える力つく」地図帳

no.41 ロゲイン

no.40 尾根・谷を区別する 

no.39 地図から分かること 

no.38 センター入試再び

no.37 専門調査委員会に出席して

no.36 読図・ナヴィゲーションへの関心

no.35 冬眠

no.34 乗り過ごす

no.33 教育にオリエンテーリングを

no.32 地図物語

no.31 有度山ロゲイン

no.30 ブラックアウト再び

no.29 アウトドアショップの意気込み

no.28 危うく道迷い

no.27 海外遭難事情

no.26 地図で迷う

no.25 傾斜の感覚

no.24 実践の発想

no.23 『キルプの軍団』 

no.22 シルバの新しいコンパス 

no.21 香港でのハイキング  

no.20 地図を見る様々な視点 

no.19 ナヴィゲーションで「失敗学」しよう

no.18 被験者になる

no.17 定位を失う

no.16 地図という比喩

no.15 センター試験

no.14 GPSは役立つか

no.13 コンパスの使用説明書

no.12 読図講習会を行って

no.11 読み書きそろばん、ナヴィゲーション

no.10 ブラックアウト

no.9  方向音痴の人と街を歩く

no.8  ナヴィゲーションの生態学

no.7  究極のアウトドアマップ

no.6  地図への関心

no.5  あきれたガイドマップ

no.4  地図のアイデア商品

no.3  人はアウトドアで正しく地図を使えるか?

no.2  ナヴィゲーション用具の利用は難しい

no.1  狂ったコンパス 

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 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

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2015年3月のシンポジウムのプログラムと村越の発表資料を掲載しております。

初心者に最適なコンパス、マイクロレーサー