6月14日に本法人の第20回の総会が行われ、本法人は20年目を迎えることになりました。総会に参加いただいた会員の方には御礼申し上げます。
最初の数年こそ模索が続いたものの、2008年からの有度山トレイル三昧というフラッグシップイベントの開催、ここ10年ほどはOMMやUTMF(現在のMF100マイル)のようなメジャーイベントのリスク管理を担当するなど、運営基盤が整うと同時に、日本のアウトドア界に一定の貢献をして来ました。これまでの会員の皆様のご支援に感謝すると同時に、今後もご協力をいただきながら、ナヴィゲーションの楽しみを広げるとともに、アウトドアの安全に貢献し、さらにはリスクに強い国民育成につなげていきたいと考えています。
オリエンテーリング界が60年にわたり育んできたナヴィゲーションの知識と技術の上に、最近ではマウンテンマラソンやロゲイニングといったナヴィゲーションスポーツの広がりが見られるようになっています。当法人は直接・間接的にこれらの活動を支えるとともに、今後を担う人材育成も進めていく所存です。引き続きどうぞよろしくお願いします。
※ 前号からの変更・追加はございません。
当法人は、ナヴィゲーションスポーツの普及やアウトドアの安全のために、イベント、講習会の開催や大会への技術サポートを行っています。今後は、以下の行事を開催、協力していきます。また、村越が関係する他団体の行事も掲載しました。
以下で紹介する事業のうち、当法人主催事業の「有度山トレイル三昧」、朝霧野外活動センター主催の「初めてのナヴィゲーション」「オリエンテーリングin朝霧」ではお手伝いいただけるスタッフの方を募集しています。
また、お手伝いではなく、運営や指導の勉強をしたい方も実費での参加を歓迎するイベントもあります。お問い合わせください。
[以下3イベントの詳細はいずれも朝霧野外活動センターwebからご確認ください]
毎年6月中旬は、昨年の山岳遭難の統計が警察庁から発表される時期であり、夏山シーズに向けた啓発とも絡めた報道が増える時期です。警察庁の発表を踏まえて、7月中旬には全国遭難対策協議会がスポーツ庁主催で開催されます。今回は、これらをつないで、減山岳遭難を考えてみます。
6月15日には、NHKラジオの「山カフェ」に出演しました。俳優の石丸謙二郎さんがパーソナリティーで、土曜日の朝に約2時間の枠で放送されており、ゲストのトーク部分だけでも実質1時間の番組です。ラジオならではと言える長尺番組です。番組では統計上最も多い道迷い遭難に焦点が当てられた回でした。基本カジュアルな番組なので、台本はありますが、山岳遭難、とりわけ道迷い遭難について好きなことを楽しくしゃべっているうちに終わりの時間となりました。
改めて思うのは、マスメディアは「方向音痴」ネタが好きだということ。方向音痴ネタは視聴者も関わりやすく、興味をそそるからなのでしょう。一種バラエティー番組なので、それも仕方ないことですが、そもそも山では「方向感覚」だけで登る人はおらず、地図を使うので、「方向感覚」を道迷いにつなげるのはミスリーディングだと事前に伝えました。その結果、ストレートなトーンではなくなったものの、結果として方向感覚も話題にしようということに落ち着きました。
山での道迷いは、感覚の問題というより、そこにある道の特性を知らないという知識の問題であり、それを踏まえてできなければならないことができないというスキルの問題です。地道にそれらを身につけることこそが解決の王道ですが、そういう地味なアプローチはなかなかメディアではストレートに発信されません(総合TVの「視点・論点」くらいでしょう)。
7月にはいると、クロ現こと、「クローズアップ現代」からも取材が来ましたた。6月末に富士山火口で3人の遺体が発見され、同日別の遭難死亡事故も重なりました。これからの富士登山シーズンに向けて啓発をしたいという企画でした。これも、軽装・弾丸登山をどう思うか、外国人の登山遭難をどう思うかなど、キャッチーなテーマがきりくちでしたが、やはり本質を捉え損ねています。これらは確かに遭難を(多少は)助長する要因かもしれませんが、それ自体が問題なのではなく、本人の力量とその場の条件とのミスマッチにこそ問題があります。ピーカンの天気が続くことが保証されているなら(そして、現代の予報であればそうであることも多い)、軽装だろうが問題ありません。本人が健康で体力的に十分なら、弾丸であっても支障ありません。逆にミスマッチがあれば、どんな力量のある人でも最悪な事態に陥ります。竹内洋岳だって山野井泰史だって、死んでいてもおかしくない目にあっているのです。そう思っているところに、スパンティークに挑戦していた大西浩さんの訃報が届きました。
7月12日には、全国遭難対策協議会が東京で行わます。今年のテーマは「外国人登山者から考える減遭難。」こちらも、21年度は「アフターコロナ」22年度は「ビッグデータ」、23年度は「情報リテラシー」。キャッチーなテーマが並んでおり、「スポーツ庁、おまえもか!?」と言いたくなりますが、ちょっとだけ捻りがあるのです。「外国人登山者の」ではなく「外国人登山者から考える」というところです。新聞では外国人の無謀や登山やバックカントリースキーのニュースが報じられています。正確な外国人登山者の総数についての詳細なデータはないものの、日本の自然がインバウンドの理由の大きな要因となっている今、かなりの外国人が登っていることは間違いなく、外国人も日本人の遭難割合もそう変わりがないのではないかというのが私の見立てです。その中で、外国人登山者の問題を扱おうというのではなく、外国人の遭難を通して、日本の山の問題を改めて考えてみようというのが、タイトルに込められた隠れた意図なのです。
そう思って、新聞記事を1985年以来調べてみると、情報提供の問題、マナーの問題、無謀な登山の問題、オーバーユースの問題、クレカの利用可能性の問題など、外国人登山者からみのニュースは国内登山者も抱えるであろう問題の先取りリストのようでした。協議会の午後のシンポジウムの司会を仰せつかっているので、日本の登山界の問題の拡大鏡として「外国人登山者」の問題を捉え、12日の協議会に臨もうと思いました。