スイスでは登山道は3段階にランク分けされている。一番下は誰でも安心して歩ける遊歩道、その上がいわゆる 登山装備が必要な登山道、さらにその上が氷河の横断などもあるアルパインルートと分かれており、そこで必要な技術は登山地図にも描かれて いる。現地では異なるマーキングによって、どのランクにいるかが容易に分かる。ニュージーランドでは自然の中のトレイルは5段階になって おり、最上位のランクの道のスタートにはそれを示す標識があった(写真)。
山での自己は自己責任とはよく言われるが、登山道の難度が分からなければ、ビギナーにとっては責任の取り方 が分からない。日本も早くコースの管理状況についての情報を出すべきだ、とずっと考えていた。この思いは、多くの山岳関係者共通だったら しく、昨年(2014年)から、長野で主要な登山道のグレーディングが公表されている。技術的な面で5段階、体力的な面で10段階に登山道のランクが分かれているので、マトリックスで50種 類の登山道があることになる。実際には体力的な要求の厳しい登山道は技術的にも厳しいので、そんなには細かく区分されてはいない。だが、 これまで落ちたら死ぬでしょという剱岳の登山路から高尾山の道まで区別がなかったことを考えれば格段の進歩だ。こういう情報があってこ そ、自己責任も全うできるのだ。
技術の5段階については、対応する登山道の典型的な状況と登山者に求められる技術や能力も明記されている。 たとえば下から3番目(中間)のランクCでは「はしごやくさり場、場所によっては雪渓や渡渉箇所もあり、ミスをすると転落・滑落などの事故の可能性が ある、案内標識が不十分な箇所も含まれる」とある。そして必要な技術として「地図読み能力、はしご・くさり場を通過できる身体能力」とあ る。さらに注釈を見ると、地図読み能力とは「地図を見て自分の位置を知ることができ、目的地へのルートを識別できる能力」とあり、ナヴィ ゲーション系ではその他に登山道のない場所/分かりにくいところで安全なコースを見つけることができる能力であるルートファインディング 能力が区別されている。個々の場所でその技術が要求されるかどうかを判断するにはそれなりの知識と経験がいるが、非常に明確かつ的確に感 じられる。
このグレーディングが今年(2015年)5 月から、静岡県、山梨県、新潟県でも、全く同じ基準でスタートした。以下のURLで見ることができる。コースについての情報が明確な形で公表されることで、登山者も自分がどのような力を身に つければいいかがはっきりするだろう。それが具体的にどんな力か、は常に吟味する必要はあるし、実際の登山道では、そこからのある程度の 逸脱はあるだろう。そういう可能性に臆することなく、グレーディングが公表されたことを高く評価したい。それと同時に、これをアウトドア 界共通の財産として、スキル向上のためのツールとして活用されることを期待したい。
静岡 山のグレーディングのURL.このURLから、長野、山梨、新潟のグレーディングにもアクセスできる。
http://www.pref.shizuoka.jp/bunka/bk-210/shisetu/yamagrading.html