前回紹介した古い地図を使ったロゲイニング「世田谷今昔物語」に参加した。
自分で準備すると、どうしても現代の地図と見比べざるを得ない。今回は純粋な参加者なので、初見でのナヴィゲーションになる。数十万円も出して でかけるヨーロッパ気分が、たった1万円で味わえるのだ。知らず知らずのうちにわくわくしてしまう。大変な行事の多い一週間だったが、この日を励 みに乗り切ったようなものだ。
大会を控えて、できるだけ現代の地図を見ないようにしていたが、バス・電車もありということで、さすがに幹線道路くらいわからないとどうしよう もないと思って、ちら見した。東名高速が通っていることだけは頭の中に入れておいた。提供されたのは昭和初期の地図。多摩川南側の丘陵はまったく
造成のされていない里山で、多摩川北側も、このエリアはまだほとんど市街地化していない。丘陵地は等高線の中に身をおけるので簡単だろう。
スタートは砧浄水場のそば。いろいろ考えて結局北部の台地から反時計回りに回って、登戸で多摩川を渡り、多摩丘陵を下って溝口で戻ってくるとい うラフなプランを立てた。前半、武蔵野台地に開析された谷をあがってしまうと、地形のない台地が広がる。ここではかなり苦労した。ポイントは「古
い環八?」というコメントがあり、一所懸命今の環八の周囲を探してしまった。やっぱり歩測と丁寧なコンパスワークが必要なのだ。その後は台地を流 れる緩やかな谷や氾濫源の用水跡などがCP位置なので、地形が利用できる。微地形を現地で捉えるたびに、つくづく都市の中には地形の記憶が残って いることを感じる。そんな密やかな地形を捉える瞬間はぐっとくる。ナヴィゲーションで敏感になっているからこその快感だ。
目で見えるものだけでなく、見えないものも活用している。高さ5mにも満たない河岸段丘は等高線には現れないが、現地では分かる。これを用水の 流れ方から推測する、暗渠のふたのコンクリート板からその下にある用水の跡を推測する、形状から旧河川の蛇行跡だということを読み取り、現在にも
残る土地利用を推測する。これらはいずれも環境の規則性と、その知識を利用した推論だ。認知心理学ではこうした知識のことをスキーマと呼んでい る。私たちは日常の移動の際にもスキーマを使っているはずなのだが、地図がいい加減だとその利用に意識的にならざるを得ない。
2回前に「ナチュラル・ナヴィゲーション」という本を紹介したが、ナチュラルな情報を利用するのはなにも自然の中だけではない。そこに環境の規 則性があり、その知識を経験によって身につけていれば、目的のためにどう行動を組織化すべきかを考える時、そこにおのずとナチュラル・ナヴィゲー ションが生まれるのだ。
やみつきになりそうな遊びである。
コンクリートのふたから、そこが暗渠であり、昔は小川があったと分かる。このお地蔵様も、川の脇に建っていたのだろう。
これが遣った地図で、示したエリアは川崎市の多摩丘陵。昭和初期の1:25000
等高線がある丘陵地は実は簡単である。ここは自然公園になっている関係で、そのままのオリエンテーリング