クイックOというのは、位置関係だけを表現したシンプルな地図を使ったオリエンテーリングである。元々は地図を十分には読めない小学校低学年へのオリエンテーリングの導入用として開発されたゲームで、日本には三条OCの藤島君が積極的に導入した。昨年11月のオリエンテーリングin朝霧で彼のプログラムを見て、その可能性の大きさに気づいた。
第一に、子どもでもできると同時に、大人でも意外に楽しめるゲームだという点だ。クイックOの地図は、オリエンテーリングと呼ぶのがはばかられるくらい単純だ。ミスするわけがないと思う。ところがいざ自分がコースに入ってみると、次に向かうべきポイントの方向をしばしば見失う。中には自分の「現在地」が分からなくなる人もいる。これは心理学では整列効果という、地図と実際の方向がずれることで、正しい方向への移動が阻害される現象だ。ポイントで方向を変えた時に、地図の整置のタイミングが遅れることで発生するのだろう。そんな状態の中でミスなく回ることは意外と達成感がある。ナヴィゲーションスポーツとして対極に位置するロゲイニングと同じように、トップから初級者まで楽しめるプログラムである。
もう一つはその技術的可能性だ。東北大学での研修会の時にデモンストレーションをしてみた。その時指摘されたのは、整置の切り替えの仕方と次に出て行くポイントを一つ前のポイントに着く前に見ているという2点だった。前者は自分でも意識していたが、後者は自分でもそのときはじめて意識できた。幾何学図形から位置関係と動くべき方向を読み取り、それを実際の認知や動きと連動させること。これらはトップを目指す上では欠かせない身体技法なのだが、大局的なナヴィゲーションの中に埋もれて、中級者に意識させ(なおかつその効果を実感させること)が実は難しかった。クイックOはそれを実感させるとってもいい教材になるはずだ。
今年、部員獲得が至上命令の静大で、新勧にクイックOをやらせてみた。初日だけでもまずまずの成果があったらしい。楽しく奥深く、そして様々なシチュエーションで使える、クイックOは三拍子揃ったナヴィゲーション・ゲームだ。