オリエンテーリングの中心にあるスキルを「ナヴィゲーション」として捉え直し、周辺スポーツとの接点を模索したら、様々な可能性が見えてきた。今やトレイルランナーから登山者まで、多くのアウトドア活動者が「ナヴィゲーションはなくてはならないスキル」と認識してくれるまでに至った。秋の大学公開講座では、初心者向けと銘打ったにもかかわらず、プロの野外活動指導者やインタープリターまで講習に参加した。もちろん、彼らの狙いはそのスキルを自分のものにして指導に生かすことなのだろうが、それ自体、ナヴィゲーションスキルの有用性が浸透した結果といえる。1月に行った指導者講習では、日本のトップクライマー、アドベンチャースポーツアスリート、地図の専門家まで様々な方が受講した。
ロゲイニングも、オリエンテーリングの可能性を広げてくれる。オリエンテーリングを、ルールで強く規定された3000m障害とするなら、ロゲイニングはジョギングと言える。3000m障害をいきなり志す初心者はいない。しかし、ジョギングなら始めてみようかと思うだろう。そして走ることが楽しくなった人が、いつか谷川真理のように、トップアスリートになるかもしれない。ジョギングという広い裾野があって初めて高い頂も生まれるのだ。そう思うと、これまでのオリエンテーリングのあり方こそが、特殊だったとも言える。過度に進化した結果「生殖能力」が衰えてしまった生物種のようでもある。
「ナヴィゲーション」というコンセプトはアウトドア界に浸透しつつある。ナヴィゲーションスキルにもっとも習熟した集団であるはずのオリエンテーリング愛好者が、ナヴィゲーションスキルの価値に最も気づいていないように思えて、残念でもある。