コラム80 登山に地図を生かすには?

7月7日に行われた全国山岳遭難対策協議会は、これまでの「遭難救助の活躍」を紹介する場から、遭難を減らすために何ができるかを考える場へと少しづつ姿を変えつつある。公的な協議会の後には、有志団体による「減遭難」を掲げたシンポジウムも開催され、日本山岳協会、日本山岳ガイド協会、国立登山研修所の代表が参加し、減遭難のために何ができるかを、それぞれの立場から主張し、またフロアからも活発な意見が出された。

 

「これから何ができるんですか?」というフロアからの至極全うな質問が出た。残念なことにそれに対して具体的に答えた人はいなかったし、遭難対策の前線にいない僕にも答えはなかった。ただ自分が深く関わるポジションとして、未来の遭難を防ぐためにできることとして、自然体験を活用した教育・啓発の機会作りとその基礎的な資料づくりには、間違いなく貢献することができるだろうと思った。

 

学校では地図に関することは社会科で学習する。しかし、日常で最も多い用途であるナヴィゲーションに活用することは少ないし、またそのスキルを学ぶチャンスもほとんどない。その一方で、学校では遠足や林間学校、修学旅行といった未知の屋外に出かける活動が多々ある。多くの記憶の人の中でそうだろうが、これらの中で地図が有効に活用されているとは思えない。たとえば、地図が最も有効であろう遠足の登山でも、事前に地形図が渡され、それを検討した記憶がある人がいるだろうか?ほとんどいないのではないだろうか。しかし、自分で距離を測ってみる、登りがどれくらいで傾斜がきついのかどうかは地形図を見れば分かる。記号の学習と絡めれば、危険な箇所の想定さえできる。まさに総合的学習である。発問をうまく用意してやれば、子どもたちでも楽しく取り組めるはずだ。

 

実は、かつてそのような実践を小学校の自然体験の前に行ったことがある。日本の多くの学校で、5年生での自然体験が行われる。ただ引率されて山に登るよりも、自分で地図を見ながら登る方が、自発的な意欲が期待できるし、安全教育にもつながるだろう。きちんとしたマニュアルを整備して、ぜひ広げたい活動である。

 

このように、登山の中には、現代の学校教育の目標や学習指導要領に示された内容に関するものがいくらでもある。それらを整理して登山の学校教育における有用性を現代的に示し、それが実践されることは、将来の潜在的登山人口の安全を高めるためにも有効ではないだろうか。

 

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

 オリエンテーリング世界選手権の日本代表経験者、アウトドア関係者らが、アウトドア活動に欠かせない地図・ナヴィゲーション技術の普及、アウトドアの安全のために設立したNPO法人です。

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