第8回のコラムで紹介した富士山アウトドアマップは、その後資金難や時間不足で休止していたが、その構想を復活させることができそうだ。9月に募集のあった県の戦略研究「富士山」に「富士山麓のアウトドアリソースの集約と活動プログラムメニュー」を出したところ、それが通ったのだ。ヒアリングでは、トレイルランニングやアドベンチャーレースなど、空間的には施設に枠内にとどまらない、内容的にはキャンプとは対照的なアクティブでアスレティックなアウトドア活動が増えていること、そのためのリソースを集約することで富士山の魅力がさらにクローズアップされることを強調した。評価されたとするならこの部分だったのだろう。
「るるぶ」のような観光中心の情報源はたくさんあるが、作られた観光資源でない自然を使う活動のためのリソースを集約し、面的広がりの中で紹介した地図は日本ではまだほとんど見られない。富士山の周囲は共同研究者になってもらった火山学者にいわせれば、火山の恵みである自然景観の宝庫である。こうしたいわば生のアウトドアリソースは、十分には知られていない。また、富士山には平安時代にさかのぼる信仰的な登山という文化的な資産も数多くある。現在はそれらがほとんど省みられていないのは残念なことだし、それが日の目を浴びることが、富士山の世界遺産登録にも貢献するであろう。
こうした生の自然がもっと活用されるためには、ソフトなインフラストラクチャーとしてのリソースについての主題図の存在が欠かせない。今回の助成獲得は、ある意味、そうした地図の価値が認められたものとも言えるだろう。