コラム55 地図屋の気概(3)

剱岳測量100周年の地図に感動していたら、今年の3月に発行された測量協会の雑誌「測量」の表紙の赤色立体図による立山・剱はもっとすごかった。赤色立体図はアジア航測が開発した地形表現手法で、もともと富士山北麓の青木ヶ原樹海のレーザープロファイリングという測量手法の成果を最大限に表現しようとする検討の中から生まれたものだ。レーザープロファイリングは森に隠れた地形も、あたかも裸地であるかのように高低を把握することができ、赤色立体図は、その細部を立体感を持って表現することに優れている。その地図を初めてみた時には、あたかも溶岩の流れる様を眼前に見ているようなリアルさに驚いた。この測量によって新たに発見された側火口もあったらしい。

 

その赤色立体図の手法に等高線と段彩をオーバーレイして剱岳周辺を地図にしたものが、「測量」58巻3号の表紙を飾っていたのだ。赤色立体図独特のおどろおどろしさはあるが、とにかくその立体感は圧倒的である。僕らは等高線図だけでも、十分に立体感を見て取ることができる。だが、等高線を立体的に見ることのできない一般の人にとっても、赤色立体図は等高線とは比べものにならない立体感を提供しているように思える。ひょっとすると、こういう地図と一般の等高線図を見ている時では彼らの脳内活動も違うのかもしれない。あるいは、僕らエキスパートは一般の等高線図を見ても、赤色立体図と同じような脳内活動を示しているのかもしれない。今後研究費を取って、ぜひ検討してみたいテーマである。

 

NPO法人Map, Navigation and Orienteering Promotion

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