入試委員長として迎えたセンター入試。大きなトラブルもなく、本部でたっぷりあった時間で、例年のように問題に目を通した。地理では惰性のように地形図を使った問題が出題されているが、深い知識を問うものではなかった。ここ2、3年の読図問題は行間を読む面白さがない。ナヴィゲーションという視点からは、地理Aの写真と地図を照合する問題が、少し興味をひいた。過去にも何度か「この写真は地図のどこでしょう」という、まさに現在地把握問題が出ていたが、久しぶりの登場である。難しくはないが、唯一のミソは、写真を見て、それが原爆ドームだと分かるという知識を要求されていることくらいだろう。もちろん、ナヴィゲーションという視点からみれば、その基礎的スキルを高等学校の学習で要求していることは興味深いし、高校地理の学習指導要領にも、景観写真と地図との対応は唱われている。それが何のため、というのが受験生に伝わっているのかどうか・・・。
今年も読図の面白さを堪能させてくれたのは、理科だった(コラムno.38も参照)。地学の地質図問題は、等高線を読み、平面的な地図から立体をイメージし、地図には直接表されていない地層の要素を推測させ、さらに断層による動きの結果を予想しなければならないという、かなり凝った問題であった。もちろん、地学の知識もある程度は必要とされるが、むしろ空間的な変換能力が要求される問題である。それが苦手な人にはかなり厳しい問題ではなかっただろうか。ふと、国家レベルの地質図を独力で作り上げ、そこから、イギリスの地下の地質構造を推測し、「地質学を聖書物語から科学に変えた」ウィリアム・スミスのことを思い出した。