講習会は、参加者が学ぶ場であるとともに、講師が学ぶ場でもある。
前回のコラムで紹介した机上講習会では、初級講習ということで、地図記号と等高線の基礎の読み取りである尾根・谷・ピーク・鞍部の読み取りを行なった。 地図記号は「まあ、復習」のつもりで、道(幅員1.5m未満)、道(幅員1.5-3m)、送電線、せきなどを写真で提示し、対応する記号を応えてもらった。基本の記号を出したのに、意外に自信を持って回答できない受講生が多くてびっくりした。その週に別の場所でやった講習会でも、普段から地形図を使っている人であったにもかかわらず、完全には記号が把握できていないようだった。これでは英単語も分からず英語を読もうとするようなものだ。記号の名前ではなく、記号と写真の対応だから難しかったのかもしれないが、それこそがナヴィゲーションの読図で要求されている知識なのだ。
等高線課題の難しさも予想通りだった。概念図では分かっても、実際の地形図の複雑な尾根・谷の連続になると、「尾根線を引いてください」といっても、途中で原理を忘れて尾根から谷を横切ってしまう線を引く人は少なくない。尾根線・谷線の把握はテニスで言えば素振りのようなものだが、同じように、一振り一振りコーチがフィードバックする反復練習が、ある程度は必要なのだろう。
それでも、写真と地形図の尾根線を対応させる課題は楽しんで取り組めたようだ。考えてみれば、これも当然のことかもしれない。写真(実際の風景)との対応という基準があって、初めてどこまで正確に尾根線をトレースすべきかが決まってくる。写真上で把握でき、またそれが識別に重要な役割を果たす線形の特徴があれば、それは地形図からも読み取らねばならないし、単純な線形を読み取れば十分ならそれでもよい。基準があるからこそ、自分がやっていることが適切なことかどうかもその場でわかる。そういうフィードバック感覚が楽しさを生み出すのだろう。
等高線読み取りにおける相対的な精度へのセンスも、ナヴィゲーションの中では重要なポイントだが、そんなことも初級者と等高線読解課題をやっていると見えてくる。ちなみに、この読図講習会の参加費が200円だと聞いたら、NHKのディレクターが驚いていたが、これだけ学ぶことがあって200円ももらえたら、むしろ申し訳ないとも思えるほどだ。