地形図を読む時に、等高線が一番難しい記号であることは誰もが感じているし、それを読み取るために、1)ピークをみつける、2)ピークから外側に向かって凸になっている等高線が尾根だ、ということは、ほとんどの読図の本に書いてある。でも、実際に山の中で指導をしてみると、それだけでは不十分だということがわかってきた。上の手続きによって、ある点が尾根だということはだいたい分かる(それでも、実際の複雑な地形図では、紛らわしいこともしばしばある)。
問題はその尾根がどう連続しているかだ。移動する時にも、現在地の同定の時にも、尾根がどのような方向を持って連続しているかは、ある点が尾根であるということ以上に重要な情報だ。この時、等高線の凸部分をつないで、尾根線を把握しなければならないのだが、実際の地形図の中では、この「凸部分をつないで尾根線を把握する」という作業が、実はくせ者なのだ。
分かりやすさのため、具体的な例を出そう。図のような尾根で、上部はわかりやすい。だが、a点から尾根線をどちらにつなぐべきかの判断が読図初級者には難しく、その結果、そのまま点線の方向に結んでしまったりする。一方上級者は、こんな場面でも難なくbc点の方向に尾根線を結べる。おそらく上級者の中には、「次の等高線の中でなるべく近い、曲率半径の小さい部分に尾根線が続いているという暗黙の知識があるのだろう。尾根の配置を把握する重要性を指摘しながら、僕自身講習会の中で、この点を十分に言語化できていなかった。
初心者の講習会をやって、彼らの間違いを実際に見てみなければ、なかなか「曲率半径の小さい部分に尾根がつづいている」という見方を意識することができなかっただろう。その反省に立って、今回(3月24日)に開催の講習会では、この点を強調してみた。数年間で何度も初級者向けの読図講習会を開催することで、読図スキルの構造をより深く意識することができるようになった。そろそろその成果を、6年前に発行して好評を博した「最新読図術」に生かして、改訂版を出してみたくなった。